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カナダで人を救ってみた。

2015年 3月9日 7:15 PM

社会 海外就職

そろそろ時効かな?今日は半年ほど前に勤務中に死にそうになってる人を発見したって話を書こうと思う。

当時Kyoshinは警備員として某ショッピングモールで勤務中。まぁ2年ほど警備員をやっているともう毎日のように、誰かが倒れたーだの、ホームレスが寝てるーだの、店先でアイスバケットチャレンジやってる奴が居るーなんていった類のことが降りかかってくるんだけど、流石に呼吸停止状態の奴は初めて見た。

2014年8月末、まだまだ夏真っ盛りの蒸し蒸しした暑さモントリオール、Kyoshinはいつものようにパトロールに出かけたんだ、まぁ警備員としての日課だよね。そしたら出歩き始めてたった30秒後、なんと誰かが床に倒れているでないの。床に顔面を突っ伏してぐったり。この倒れ方から状況が尋常じゃないってことだけは一瞬でわかった。

 

'Oh shiiit!' 自然に出る。僕はもうアメリカ人だ。早速駆け寄る。男だ。若い。

対象を確認すると同時に(おおう、この状況どっかで見たぞ…。救命措置の第一状況じゃん。)なんてことを本気で思う。意外と人間はここぞって時に冷静になれるのかもしれない。
どうすんだっけ… えと、まずは意識の有無を確認だ。

誰がどう見たって意識が無いのは明らかであったが一応マニュアル通りにやってみることに。人の命がかかってんだ。適当にはできん。

肩をポンポンしつつ、'Hello! Hello! Hey! HEEEEEY!'…意識なし。うん、知ってた。

駆けつけた同僚に早速救急車の手配を頼む。「緊急!意識が無いって加えといて!」惚れ惚れするくらいマニュアル通り。だって講習の時と全く同じ状況なんだもん。ここまでで発見から1分ほど経過。

次は呼吸の有無を確認だ。男は完全に床に突っ伏しているものの、なんとか口と床の間に指を突っ込んで確認できる。さっそく指を滑り込ませて感触により確認を試みる。

あれ…?

息してなくね?

ちゃんと確認したい。そのためにはこの男の姿勢を変えなきゃだめだ。周囲に目をやると、ポツリポツリと野次馬が集まりだしてきているでないの。その中には知ったような口調で「触っちゃダメよ。ちゃんとプロが到着するまで待ちなさい。」とか言ってくるババア中年女性がいてブチ切れそうになった。何言ってんだ?今やらなきゃこいつは確実に死ぬ。

周囲の人に手伝ってもらい、そーっと男の姿勢を変えることに。うつ伏せから仰向けへの大転換だ。当然リスクはある。ただ首や背骨にダメージがあるかどうか判別できるような状況じゃなかった。天井の防犯カメラが倒れた瞬間を捉えているはずであることはよく知っていたが、事務所に戻ってそんなの確認しているような場合じゃない。一秒でも早く呼吸させねば脳が死ぬ。

なんとか姿勢を変えることに成功。ここは空調が効いてて寒いくらいなのに男はすっごい汗をかいてる。そしてやっぱり呼吸してない。顔色が瞬く間にどす黒い紫に変わっていくのがわかる。人間ってこんな色になれるんだ。ああ…こりゃ死ぬわ。

人工呼吸をすることに。幸い救命キットが手元にあるので直接接触しなくとも息を吹き込めるマスクがある。便利よのう。
おっとその前に喉に異物が詰まったりしてないか確認しなきゃ。ゴム手をはめてお口の奥をくちゅくちゅ探索。何も無し。うん、知ってた。

マスクを介して男と口を合わせると、なぜかうっすら血の匂い。かまわずゆっくり息を吹き込む。2回吹き込んだ後は心臓マッサージの王道メニューへ移行だ。
心臓付近に手をやるとなんと心臓は動いてるではないか。しっかり耳を当てると通常の10倍くらいの速さでバクバクいってる。(ヤダ、心臓めっちゃ頑張ってる。生きようとしてるんだなぁ)などと感心。呼吸止まっても心臓って動くんだなぁ。

同時に男に反応が。ぷすぅぅ〜って弱々しく息を吐いてまぶたをプルプル震わせるではないか。お、助かるかもしれん。

倒れている人と呼吸の確認をする管理人うつ伏せで倒れている男の呼吸を確認中

こりゃなんとかなるかもと、ちょっと様子を見ることに。男はプフウーーーと浅く息を吐くも再び止めてしまう。こりゃしばらく続けないとダメだ。もう一度息を吹き込む。おい、僕の膝下で死ぬなよ。

呼気を吹き入れる→男が息を吐く→再び吹き入れるの繰り返し。なるほどこいつは自分で息を吐くことだけはできるらしい。息は吸えないので僕が吹き込む。2人は文字通り一心同体。何この一体感。
しかし、どのくらい続けただろうか、野次馬の雑踏の中ふと頭を上げると目の前のベンチに涙ぐんで両手で口を抑えた若い女がちょこんと座っている。どう見ても野次馬じゃない。僕は早速聞いた。「あんたこの男の知り合いだな?」頷く女。「どうやって倒れたのか知っているか?」強い口調で聞いた。この時の僕は男が頭を打ったのかどうかをとにかく知りたかったんだ。

残念なことに彼女はその瞬間を見ていなかった。「トイレに行ってたの…戻ってきたらこんなになってて…。もしかしたらオーバードーズかも…。」涙ぐんで完全にパニックになっている。だみだこりゃ。

再び人工呼吸へ移行。周りの野次馬がやかましいがもうどうでもいい。誰かが僕の耳元で叫んでる。忙しいので完全無視。ついに誰かに肩を強く叩かれた。何なの。

「彼はドクターよ。」代わりなさい。

看護師でしたか、無視してゴメン。

よく見るとドクターらしきスキンヘッドの男が僕の横にぴたりと付いている。そうそう、ここは大型ショッピングモール。クリニックだってあるんだ。救急隊員ではないけれどシロウトの僕より100倍ましだ。健闘を祈りつつ場所を譲る。

救急搬送される人と野次馬救急隊員到着直後の様子。僕のできることはもうない。さて、レポート書く準備するかぁ。

ビデオを確認するため事務所に戻ると救急隊員が到着。電話してからたしか12分くらい。けっこう早い。僕はもう定時を過ぎていたんで、この件のレポート下書きだけささっとやって離脱準備。このあと学校あるんだもん。

救急隊員到着から一気に事が進展。AEDをバンっと食らわせて瞬く間に病院へ運んで行った。さて男は助かったのか?

主役が去ると野次馬もポツリポツリと消えていく。ただ床には忘れ去られた男の汚いバックパック。連れの女に持っていくように頼んだんだが忘れたか。身元のわかる物を探すため事務所に持って帰って確認せねば。

事務所の奥でバッグに手を突っ込んでゴニョゴニョやってると細〜い注射器が2本見つかる。思わず素手で取り出しちまった。「Kyoshinすぐ戻しなさい!」叫ぶ同僚。これやっぱあれだよねぇ…。
連れの女が「オーバードーズかも…。」って言っていたのを今更思い出す。あーーー。

「あの女もジャンキーよ。ったく。」同僚が口を付く。目を見ればその女も打った直後だというのが明らかだという。そういえばトイレ行ってたって言ってたなぁ。トイレで打つんだ。なるほど。うちは高級ショッピングモールなんだが…。


翌日事務所に着くと、とあるおばちゃんが受付で同僚と話し込んでいた。昨日の野次馬の一人だ。

おばちゃん「担架で運ばれる時、彼は救急隊員の質問になんとか答えられてたからねぇ、きっと助かったよ。あんたらグッジョブだよー。」

久々にいいニュースだ。


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